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単身パリへ渡り、ファッションブランド立ち上げ。日本の職人と協力し作り出す、エシカルで物語のある服の数々

更新日:2019年3月24日

トラべロコは、海外在住日本人(ロコ)が旅のお手伝いをしてくれるサービスになります。この記事では、トラベロコが、タウンミートアップを開催していく先々で出会った日本人にインタビューし、現地での事や海外に行くまでの経緯、日々の生活などをご紹介します。


今回は、フランスのパリにて、女性向けファッションブランドを設立・運営されている真鍋実恵さんにお話を伺いました。大学卒業後、単身パリにてゼロから洋裁を学びブランドを立ち上げた彼女に、移住の経緯や苦労に加え、自身のブランド「atelier Bourgeons」についてお話いただきました。



真鍋実恵


atelier Bourgeons代表。パリ郊外ブローニュ在住。 岐阜県出身。大学時代、サステイナブルなものづくりに興味をもち、関連記事の寄稿を行う。週末にはバンタンスクール・スタイリング科に通いつつ、プロスタイリストのアシスタント業務で実践的なノウハウを学ぶ。大学卒業後、本格的に服創りを学ぶため渡仏。パリのデザイナーズブランドで働く傍ら、パタンナー専門学校AICPに通い、仏政府公認レディースパタンナー資格を取得。2016年、デッドストック生地や布切れを使って服創りを開始し、atelier Bourgeons を立ち上げる。


公式WEBサイト: https://www.atelierbourgeons.com/ 

Instagram: https://www.instagram.com/atelier_bourgeons/

Facebook: https://www.facebook.com/atelierbourgeons/



目次
  1. 片道切符で渡ったパリでの挑戦

  2. エシカルでファッション性の高いブランドを作りたい

  3. 外身(デザイン)と中身(ものづくりの背景)が美しいブランドへ

  4. オシャレを通じて、新しい世界に出会うキッカケを作りたい


1.片道切符で渡ったパリでの挑戦


先生とクラスメイトとの写真(左下:真鍋さん)

|そもそも、どのような経緯でパリへ渡ったのでしょう?


昔からずっとファッションが好きで、高校卒業後は専門学校で服づくりを学ぼうと思っていました。しかし両親は、「大学を出てから好きなことをしなさい」と猛反対。それならば、卒業後すぐにファッションの聖地であるパリへ行ってしまおうと考え、まずは大学のフランス語学科に進学しました。学生時代からずっとヨーロッパ古着が好きだったこともあり、古着やアンティーク文化が日常に溶け込んでいる国で生活してみたいと思ったのも、パリを選んだ理由の一つです。


そして大学を卒業後、派遣社員として半年間働きながらお金を貯め、渡航の準備を始めました。


|というと、洋裁の勉強は渡航後にパリで始めたのですか?


そうなんです。服飾業界を目指す大抵の人は、まず日本で洋裁の技術を習得し、渡仏後に語学の勉強を始めますが、私は全く逆のプロセスでした(笑)。しかし思い返してみると、当時24歳だった自分にとって、服づくりの勉強をスタートしたのがフランスで良かったなとしみじみ感じています。日本ではほとんどの人が18歳頃から服飾の勉強を始め、20代にもなると皆さん企業でバリバリ活躍されていますが、パリの服飾学校ではキャリア変更を目指して学校に通う人も多いので、生徒の年齢層が10代〜40代と幅広いんです。年齢や背景に関係なく、のびのびと勉強できる雰囲気にはとても助けられました。


ただ、渡仏する際に1年分の学費と生活費しか持ってこなかったので、その後進級するまでには色々と苦労しましたが…。


|どういうことですか?詳しく教えてください


大学卒業後は、早くパリへ行きたいという思いばかりが先走り、「現地でどうにかなるだろう」という気持ちで、1年分の学費と生活費が貯まってからすぐに渡航してしまったんです。そして案の定、半年が過ぎた辺りから焦りを感じ始め、今後どうするかを模索しながら残りの学校生活を送ることになりました。今考えると自業自得ですが(笑)。


そんな中、当時はフランス人だけの特権だった「アルテルナンス」という制度(企業で働きながら無償で学校に通えるプログラム)が、来年度から外国人にも利用できるようになると知ったんです。働き先は自分で見つける必要があったので、業界未経験の私には狭き門でしたが、計200社ほどの企業へアタックした末にやっと受け入れ先が決まり、なんとか無事に進学することができました。


|すごいですね。それでパリ滞在だけでなく、働きながら学校に通っていたんですね


そうですね。あんな絶好のタイミングでチャンスを掴めたのは、奇跡に近いかもしれません。実際の仕事現場で色々な経験をさせていただき、普通の学校生活に比べて何倍も多くの事を学ぶことができたので、この制度を利用できて本当に良かったと感じています。未熟な私を受け入れ、長い間根気よく育ててくださった社長と先輩方には、ただただ感謝しかありません。



2.エシカルでファッション性の高いブランドを作りたい


蚤の市で買い付けをしている様子

|卒業後にブランドを立ち上げたのはなぜですか?


いつか自分のブランドを作りたいという思いは、この業界を目指すようになってからずっと抱いていました。そんな中、以前の職場で生産に関わる一連の業務を勉強・実践しているうちに、「ここで学んだ事を活かしながら自分で始めてみよう」と考えるようになったんです。そして卒業後、しばらく会社の作り方を学んでから、古着のリメイクや一点ものの服を販売するWEBショップを立ち上げました。


|昔から好きとおっしゃっていた古着ですね。どんな想いではじめたのでしょうか?


単純に古着が好きだったのと、「できる限り人や環境に配慮しながら、ものの背景を含めてポジティブなファッションを提案したい」という想いからスタートしました。

もともと、ファストファッションの全盛期だった大学生の頃から、安価な服がどんどん生まれては捨てられていく状況に違和感を感じていたんです。そんな矢先、エシカルファッションという言葉に出会い、大きな関心を持つようになりました。


|エシカルファッションってなんですか?


エシカルとは、英語で「ethical(倫理的な)」を意味し、人や環境に対する良識に従って生産、流通されているファッションのことを指します。


例えば、自然環境や人々の健康に配慮して農薬・化学薬品の使用を控えたり、生産者さんに対等な賃金を支払うことで、児童労働や搾取を防いだり。出来上がった服だけでなく、その背景も含めて美しいものづくりに取り組もうという考えが根底にあります。


さらに、今あるものを再利用したり、リメイクやお直しをすることもエシカルな行動の一つです。お気に入りの服を長い間大事にすれば、資源の無駄遣いが減り、ひいては、それが生産の過程で関わっている人々への感謝にも繋がります。


ただし、そのような考えばかりに目がいき、デザイン性が劣ってしまうのは本末転倒の話です。エシカルのコンセプトを持ちつつも、素直に「可愛い」と思われるファッションブランドを作るのが、一番の軸となる目標でした。


そしてその目標をより具現化するために、今のブランド「atelier Bourgeons」を立ち上げたんです。



3.外身(デザイン)と中身(ものづくりの背景)が美しいブランドへ


今春発表されたばかりのatelier Bourgeonsの新コレクション

|atelier Bourgeonsについて教えてください


「Bourgeons(ブルジョン )」は、仏語で「蕾」という意味を持ちます。私たちが作る服が「蕾」となり、それを誰かが纏うことで、その人の魅力と共に花を咲かせる。そんな風に、服と人がつながり合ったらいいなという意味を込めています。


atelier Bourgeonsでは、パリのアトリエでデザインを練り、日本の機屋さんやメーカーさんから直接仕入れた生地を使って洋服を作っています。


通常は、日本の機屋さんと消費者の間に仲介業社(問屋や商社など)がいくつも存在するため、最終的に織り屋さんに入る利益が少なくなってしまうんです。さらに、仲介業社が入ることで生産の背景が複雑化し、購入した服や生地がどのように作られているのかが見えなくなってしまいます。


そういう面から、より多くの利益が織屋さんへ還元されるような取引を心掛けると共に、なるべく自らご挨拶に出向き、生産者さんのお話を直接伺うようにしています。職人さんの想いや、ものづくりが行われている様子を、実際に服を着てくださるお客様にもお伝えしたいんです。


|パリで真鍋さんがデザインしたものを、日本の生産者と直接協力しながら洋服にしていくんですね


そうですね。もちろんエシカルな考えは根底にありつつ、第一声で「あ、可愛い」と言ってもらえるようなものを目指しているので、デザインにもこだわっています。現状、エシカルなコンセプトでファッション性の高いブランドはまだまだ少ないと感じており、この二つを両立させることが、自分のブランドのアイデンティティとして一番重要なポイントだと思っています。



4.オシャレを通じて、新しい世界に出会うキッカケを作りたい


「atelier Bourgeons」サイト

|atelier Bourgeonsの服をどんな人に届けたいですか?


天然素材が好きな方はもちろん、エシカルというワードや天然素材に全く興味が無い人にもぜひ知っていただきたいですね。初めは服のデザインに惹かれて購入されたお客さまが、その背景にある様々な物語を知ることで、これから出会う色々なモノの背景に興味を持ってくださるきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。ちょうど2019年3月末(4月まで延長の可能性あり)まで、公式WEBサイトにて新コレクションの予約販売も受け付けていますので、ぜひご覧いただければ幸いです。


|最後に、今後の抱負を教えてください


今後は、ブログやSNSを通してものづくりの背景をより深く皆さんにお伝えしていくと共に、フランスや日本でイベントやコラボ企画を行い、お客様と直接お話できる機会を設けていきたいです。


素敵な職人技に出会ったり、生産の裏側に隠された真実を知ることは、人生の視野と見識を広げ、それがより心豊かな毎日に繋がると信じています。服というツール通して、誰かの心に花が咲く “きっかけ” になることが、atelier Bourgeonsの最終的な理想であり、目標です。毎年変わる流行や時代の波だけにとらわれず、ずっと愛し続けられる様な服をみなさんにお届けできる様、これからも頑張ります。


 

【atelier Bourgeons】


公式WEBサイト: https://www.atelierbourgeons.com/ 【2019年3月末まで予約販売受付中(4月まで延長の可能性あり)】 Instagram: https://www.instagram.com/atelier_bourgeons/

Facebook: https://www.facebook.com/atelierbourgeons/



 

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